(狐面本丸話) よその宗教を熱心には祝わない話

『それではお聞きください、刀剣男士Team三条With加州清光で、【刀剣乱舞】!』
「おい」
「はぁ……いい……」
たん、と音を立てて閉じる障子の方を、狐面は知らん顔で絡繰(ぱそこん)とにらめっこしていた。

「……おい、あんた」
「はあ……チケット、欲しかった……」
戸口から声を掛けたものの、なかなかの大音声に満たされた執務室で、主に声が聞こえた形跡はない。
「どうせ、写しの刀なんかに興味はない、か……」
「~~♪」

「……おい。そろそろ気づいてくれ」
「♪ ……!?」
びくう、と小さく飛び上がる様な驚き振りをみせつつ、狐面審神者は戸口に向き直った。

「い、い、いつからそこに……!?」
「あんたが歌いだしたころから」
「あの、その、居たなら声を掛けて……」
「掛けた。が、あんたが気付かないようだったから……俺に興味はないのだろうと」
「ご、ごめん……もっと大きい声で声かけてくれていいのよ」
「あんたの愉しみを邪魔するつもりはない」
「ごめんってば……。ごめん。それで、来てくれたのには理由があったんじゃないの?」
「まあ、ああ。昨日は西洋の祭りだという話だったから、燭台切が生姜の焼き菓子を作ったんだ。そら」

ころりころり、と、雪の妖精をかたどった焼き菓子が近侍からもたらされる。

「ついでに茶も入れてきた。俺の休憩に付き合ってくれないか」
「え? 切国が休憩取るの? いいけど……珍しい」
「(俺が何かしたい、と言えば、主はよほどのことがない限り、ダメとは言わないからな……)
俺だって、休憩位とる」

妖精の頭から口に入れ、首で折りとってぼりぼりと咀嚼する近侍と、
お面を退けて妖精の足元をそっと口に入れる審神者と。
言葉少ななふたりだけの時間は、ゆっくりと過ぎて行った。

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