要領のいい女

あの男は、お世辞込みで言っても、社会派ではなかったはずだ。 日頃ひょうひょうとしながら人を食ったような上司を横目に、自分は目立たず衒わず淡々と仕事をしてきていたはずだった。 ある日出勤してくるまでは。 勤怠カードをチェッ … 続きを読む

闇に骸骨が笑う

天賦の才というものは、得てして不幸なものである。 男には、幼いころから才能があった。 年若くして学舎を巣立ち、家族から離れ、独り立ちするほどの才が在った。 男の才能には、男の才を見出した師も舌を巻くほど。 いずれ師の跡を … 続きを読む

鍋食え鍋

心の平和は大事なものである。 仕事場で面倒な仕事を押し付けられながら、今日は夕飯の献立を考えることにした。 わずらわしい書式の設定も、わずらわしい会議のセッティングもうんざりである。 寒くなってきたこの時期、夕飯のメニュ … 続きを読む

星を見に行く

流れ星に願いを。 流星に頼むような願いなど無用。 全く対照的な男女の上にも、流星群が流れていく。 今夜は流星群の日、と楽しみにしていた彼女は、男に無理を言って、空のよく見える郊外まで連れてきてもらった。 男は、この寒空の … 続きを読む

いざ進め、たとえ火の中水の中

独り立ちを決めた彼女の横顔は、凛としていた。 祖母と母との三人暮らしから、人生の目標を選んだ彼女。 居なくなった父の代わりに、母を守ること。祖母を守ること。 可愛らしい女の子の身でありながら、腕を磨き、知識を積み重ね。 … 続きを読む